拳法対決

 東京ドーム、地下闘技場。ここでは定期的に闇の格闘技興行が行われている。無
論、最大トーナメントを終えた今現在の状況でもそうだ。
 ここで、地下闘技場には似つかわしくない二人が向かい合っていた。
 稲城文之進、日本拳法の達人で、先の最大トーナメントでは花山と闘い、足を折ら
れて敗北している。最大トーナメントの時に比べて、頭髪を短く刈り込んでいるようだ。
 三崎健吾、少林寺拳法の使い手で最大トーナメントでは二回戦でジャックと闘い、
肉を食いちぎられ、無残に敗北している。
 両者が審判に呼ばれ試合前の注意を受ける。
 「三崎さん、あなたがまたここに戻ってくるとは」
 稲城が口を開く。
 「先日の闘いで自分がいかに未熟か思い知りました。試合の後、真の護身は何な
のか…それを見つけるために武者修行しましたが、どうしても答えが見えてこなかっ
たのです。」
 「それでまた、ここに戻ってきたという訳ですか。自分も一緒です。王者になれば見
えてくると思いましてね。今回は絶対に負けられませんよ。」
 ややあって、
 「両者、元の位置!!」
 審判の声が場内へ響く。二人は踵を返した。
 「開始めえ!!」
 審判の声と同時に両者は円を描き、間合いを計りだした。
 一分…二分…両者を円が狭まり始め、観客は緊張の余りためいきを漏らした。その
時、三崎が風を巻いて仕掛けた。無駄がなく早い直突き。「少林寺拳法は守主攻従」
稲城の少林寺拳法への知識が逆に反応を遅らせた。
 ミチィ。稲城の顔面に直突きが入る。「ツッ!」思わず顔をゆがめ、痛みが伝達する
前に感じた。「お家芸の直突きを決められるとはなんと言う不覚か!」と。
 追撃の逆小手が稲城を襲う。「ドォッ」衝撃が体を支配する。
 「もらった!」三崎は極めの関節技に入る前にそう思った。甘美な快感にほんの数
秒酔いしれる三崎。
 その隙を稲城は見逃さなかった。稲城の手首を掴んでいる三崎の手の爪を一瞬の
隙をついて剥ぎ取った。
 「うぎゃあああ!!」三崎の絶叫が闘技場にこだました。そこからの間髪を入れな
い指捕り。「ばきっ」三崎の親指があらぬ方向に曲がってしまった。
 止めの逆十字にいこうとした稲城の視界には三崎の姿は無かった。「どこに…」稲
城が一瞬狼狽した隙に三崎の手の甲が顔面を捕らえた。
 目打ちである。これをくらうと視界が効かなくなってしまう。「キョエエエ!」三崎が
雄叫びとともにラッシュを仕掛けた。飛燕の連撃により稲城の体は見る間にあざだら
けになって行く。
 そして、稲城の顔面に三崎の熊手打ちがヒット!白い歯がこぼれ落ちた。もう三崎
の勝利は確実かと思われた。
 しかし、稲城の歯を見た瞬間に三崎の脳裏にジャックに蹂躙された時の思い出がよ
みがえる。「ヒイイッ!!」三崎は突如うずくまってしまった。
 稲城はその隙を見逃さず、裸締めで三崎を落としにかかる。
 5秒…10秒…20秒…
 三崎は必死にこらえたが、失神してしまい、勝負は決した。
 「勝負あり!!」
 その声で観衆は歓声を上げた。
 回復した後、三崎は勝者に祝福して、さらなる修行のため、いずこともなく去った。稲
城との再戦を誓って…
 稲城は更なる強者を求めて、地下闘技場で闘い続けると言う。
 男たちの物語は、まだ、始まったばかりだ。

					                   終わり


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