6.マウント斗羽の「死」の真相
以上のように御老公は、マッチメイクのかなりの部分を愚地独歩に依存していたことがわかります。また親しい人の申し出なら、マッチメイク上でわりとワガママを聞いてくれる、ということもわかります。
では、御老公が「ナゼかのォ、わしの方がはるかに齢上なのに、どうも君にはヘリくだってしまう」と言っていたマウント斗羽に対してはどうでしょうか。あの幼児のように天衣無縫な御老公が「ヘリくだってしまう」というほどです。斗羽が申し出れば、たいていの対戦は実現するものと思われます。
だったら、斗羽は「正選手として出場し一回戦で刃牙と闘う」こともできたはずなのに、なぜリザーバーなのでしょうか。リザーバーでは、どこから出場することになるのか(そもそも出場できるか否か)予測できません。
夜叉猿Jrにゲランと加藤が倒された後、マウント斗羽がリザーバーとして出場することになりました。控え室で膝にチューブを巻きながら、「こうしてチューブを巻いておけば大丈夫でしょう。一試合や二試合」 と御老公に言っています。
ところがそのすぐ後(ワゴン車潰しの後)、斗羽はこう呟きます。
「範馬刃牙への復讐のチャンス……感謝しますよ御老公──」
おかしいではないですか! 刃牙とぶつかるとすれば、それは準決勝戦です。斗羽が刃牙に復讐するためには、どうしたって二回戦→三回戦→準決勝と3試合を行なわなければならならないのです。つまり刃牙戦のときには、すでに膝は大丈夫ではない、完全な体調では闘えない──ということになります。
そうなる可能性がわかっていながら、なぜリザーバーを引き受けたのでしょうか。マウント斗羽は、いったい何を考えていたのでしょうか?
斗羽の心理を探る前に、次の考証を済ませておきましょう。
最大トーナメント後、斗羽と猪狩は東京ドームで闘います。猪狩が卍固めをかけたところで斗羽に異変が起き、十六文キックを出した直後意識を失い、病院に運ばれます。
で、死んだかと思われマスコミにもそう報道されたのですが、これは嘘。実は斗羽はフランスに渡り、モンパルナスの森で好きな絵を描いていた……というオチになります。
この斗羽の一連の行動、いったい「どこ」から「どこ」までが芝居だったのでしょうか?
2つの可能性が考えられます。
1.倒れたのはまったくの仮病である。全ては医者を抱き込んでの芝居である。
2.倒れたのは仮病ではなく、前々から直腸ガンなりなんなりの病気であった。猪
狩戦の途中で力つきて失神。病床で、死んだことにして消える計画を思いついた。
遺言状は病院のベッドで書いた。
元気な斗羽の姿を見ると、ここは当然、1.と考えたいところですが、はたしてそうでしょうか。仮病で猪狩や週刊バトル・豊増氏はだませても、医学の専門家はだませません。「国立岡本総合病院」の久保医師をはじめ医師,看護婦たちに、病院に運ばれてから「実は仮病なんだけど、こういう事情で、協力してはもらえまいか」とか説得したのでしょうか。
それとも、事前に全ての話しがつけてあり、試合後は岡本病院に運ぶ手筈になっていたのでしょうか。
病院職員の全員がプロレスファンというわけでもないでしょうし、なんたって税金で運営されてる国立病院なんですから、いくら国民的ヒーローでも、一私人のわがままなんか聞いてもらえるはずもないでしょう。医者達は治療費以外の裏の金を受け取ったりしたら、収賄罪になってしまいますし。
また、実は前々から岡本病院関係者全員(救急車の隊員もでしょうね)に、大金を積むなり、弱みを握るなりの方法で事前工作してあった……というのも変です。
猪狩との「試合」は、元々は二人だけでひっそり行なう予定でした。大勢の観客の前で倒れ、マスコミで大きく報道されたからこそ、斗羽の「死去」はドラマチックにファンの心に残ったのですから、二人でひっそり行なう試合なら、そんな演出の必要がありません。
ちょうどその時刻に斗羽が救急車で運び込まれる……そんな連絡が、病院,会社の側近,さらには奥さんなどにあらかじめしてあったはずがありません。下工作の時間的余裕などなかったのです。
こう考えてくると、斗羽は本当に病気であり、倒れたのは仮病ではない、と考える方が自然のようです。
また、絵を描く余生を送りたいなら、別に死んだことにしなくても普通に引退すれば充分であること。バレバレの変装で絵など描いて、もし日本のマスコミに知れて全てが暴露されたときに予想されるファンの怒り。そして手術直後のような姿をした担当医・久保医師の「残念です……」という言葉……。これらを考え合わせると、一つの仮説が浮かび上がってきます。
実は、斗羽は真に重病であり、もはやリングに立てる体ではないのではないでしょうか。
ではその病気とは?